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【歌舞伎よもやま話】第二話「武士と町人」 / 語り:大城戸建雄

こんにちは。手ぬぐい専門店 麻布十番麻の葉です。

歌舞伎にまつわるよもやま話をお届けします。語りは大城戸建雄氏。歌舞伎の手ぬぐいの原画を手掛ける歌舞伎エキスパートによる歌舞伎のエピソードをどうぞご堪能ください。

歌舞伎よもやま話「武士と町人」

江戸時代は、武士を身分の上とし、それ以外の町に住む人を町人、農村に住む人を百姓という括りで身分制度化していたようだ。そして江戸は武士、京坂は町人の人口密度が多く、自然、江戸には武家文化が、上方には町人文化が発達した。
歌舞伎に於いてもその特徴が表れ、江戸歌舞伎は「荒事」、上方歌舞伎は「和事」とといわれる明快な演出の違いがある。
それぞれの演出の創始者は、江戸は初代市川團十郎で、上方は初代坂田藤十郎である事は周知の事。
江戸の荒事は、「やっとことっちゃァやっとこな」と荒々しく、いかにも力持ちの豪傑ぶりを表現していて、金平ものから曽我ものを物語の背景に、やんちゃな子ども心を持ったタフガイの色気を持つ。さらに背景に、鎧兜や刀や槍、岩や石垣といった、強靭な固いイメージの雰囲気をうかがわせる。
一方上方は、「魂抜けて とぼとぼ うかうか」という竹本にのって花道を登場する紙屋治兵衛や、遊女夕霧の登場を待つ藤屋伊左衛門など、「つっころばし」と呼ばれる優男の、いかにも頼りなさそうな世間知らずのぼんぼんが、草食系のイケメンの色気を醸し出し、そこに、手拭やきぬ擦れの柔らかいはんなりした雰囲気が漂うのである。
江戸は将軍家お膝元としての武士社会、上方は天下の台所とした商人中心の町人社会で、それらが生み出す文化の違いが、歌舞伎劇の創作にも影響を及ぼしたといえる。
初期の江戸歌舞伎は、上方から上京した、猿若(猿若勘三郎)の滑稽な寸劇だったようだが、武士の生まれといわれている初代市川團十郎によって、荒事歌舞伎への道に布石が打たれた。秘伝に、「子どもの心で演じる」とあるように、おおらかで正義感溢れ、勧善懲悪の真っ当を通す生一本の英雄なのだ。武士とはこのように正義感溢れ、潔いものであるべきだ、という江戸市民の理想的な武士道の表現だという。
一方上方歌舞伎は、人形浄瑠璃の物語を根底に発達したが、商家での主従関係や親子の情愛、金銭にかかわる因縁が、義理と人情の世界の中で展開され、さらに色恋が絡んでくるという、情の絆が複雑に織りなされる物語が展開する。いつ自分の身にもおこりかねない、というような現実性をおびた、卑近な物語の展開が特徴的だ。
豪快で、胸のつかえがすっと消えて潔い後味の爽快感を味わえる江戸歌舞伎、情のきびに触れながら、しっとりとした余韻を残し、人間のさがを慈しむ上方歌舞伎、それらの伝統的な特徴を、若い役者たちに引き継いでいってほしいものだ。

筆者 大城戸建雄原画による手ぬぐい

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